一斗缶&せんべい缶で調理用ロケットストーブを作ってみた【後編】


前回の一斗缶&せんべい缶で調理用ロケットストーブを作ってみた【前編】に続き、今回の【後編】では実際に使ってみた使用レポをお届けします。



燃料

使える燃料の選択肢の広さが自慢のロケットストーブですが、我が家では杉の木が大量にあるのでそれを使っていきます。というのも我が家の敷地内には移住前に鬱蒼とした杉林があり、日当たりがあまりにも悪かったので移住のタイミングで大家さんが伐採してくれたのです。ちなみに画像に写っている左の段ボールは杉の葉ですが、右の段ボールに入っている小枝のほとんどは栗の木です。栗の木も以前テーブルを作ったように結構あるんです。





火入れ

焚き口に杉の葉と火のつきやすそうな細い小枝を詰め込みます。杉の葉はとても火が付きやすく、あっという間に燃え尽きてしまいますが、着火後は勢い良く燃えるので着火剤として逸品です。杉の葉さえあれば新聞紙や段ボール、市販の着火剤を用意する必要はありません。




ライターで着火。勢いよく杉の葉が燃え、みるみるヒートライザー内部へ吸い込まれるように燃え広がっていき





火口から勢いよく火柱が立ちました。杉の葉GJ。移住してから村の年配の方から教えて頂いたライフハックでしたが、昔から山で生きてる人はいろんなこと知ってますね。尊敬!




焚き口では「ゴゴゴゴゴゴ」とロケットエンジン音のような吸気音が。さすがロケットストーブ。火が安定してきたら太めの枝を小まめに投入していきます。





いろいろ試してみた

ということで、まずはやかんでお湯を沸かしてみます。ここで力を発揮するのが以前作った太陽熱温水器。天気が良ければ2〜3時間で水を50度くらいのお湯にしてくれるので、そのお湯を使ってみると





ものの数分で沸騰してくれました。う〜ん、エコ!





お次に大量のお湯を使うパスタもロケットストーブ太陽熱温水器のコンボ技であっという間に





美味しいキノコパスタの出来上がり。




焼きそばもこの通り。平日の昼間っから外で山景色を見ながら焼きそばを焼いてるとBBQ感覚でなんだか贅沢な気分。





夕食は土鍋で炊飯。ロケットストーブは火力調整が難しいのですが、何度かやっているうちに徐々にコツがつかめてきて





ふっくら美味しく炊けるようになりました。お米一粒一粒が立ってツヤツヤもちもち





おせんべい缶の中にアルミホイルに包んだ冷蔵庫の中の残り物を入れておけば




ご飯の炊き上がり時にはしっかり温まっています。我が家はアンチ電子レンジ派で電子レンジを持っていないのでこのアイデアは超便利。ちょっとの熱も無駄にせず有効利用!





使用後はこんな感じで灰が溜まるので





木っ端で作った自作灰かき棒で新聞紙に出して畑に撒いて土壌改良。このエコシステムが筆者的にたまりません!





実際使ってみて良いと思った所

なんといっても燃料になる木材がいくらでも落ちているのでコストがかからないこと。もちろん薪にするために木を拾い集めて切ったり、折ったり、乾燥させたり、濡れないように保管したりとそれなりに労力はいりますが、その行程自体が楽しいのでまったく苦になりません。そして火つけの準備から消火までの一連の行程もやはり楽しいですし、繰り返し火と触れ合うことで、火というものを知り、コントロールしていく術が身についていく感覚がたまりません

ロケットストーブを使い始めてから1日のサイクルも大きく変わりました。朝起きて最初にやることは目覚めのコーヒーのための火起こしと太陽熱温水器でお湯作り。昼食のパスタのための湯沸かしに、夕食の炊飯や炒め物、汁物の温め等、1日3食全てロケットストーブを使用しています。先進国ニッポンの現代を生きているとは思えないこの超アナログライフが人間としての感覚を思い出させてくれます



イマイチな所

実際に数ヶ月間使ってみて不満はほとんどありませんが、強いて挙げるとすれば次の3点。

1.火をつけた後は目が離せない


前編】でロケットストーブの仕組みを図入りで説明しましたが、理論的には焚き口に薪を入れると燃えていくにつれて重力で薪が自動的に下に落ちていく構造なのですが、実際には摩擦が生じるため、放っておくと薪の下部分だけが燃えつきて簡単に火が消えてしまう上、まだ燃えていない焚き口上部にはみ出した薪が火がくすぶっている状態でゴロっと地面に落ちてしまい危険です。時間にして長くても最低10分置きに薪が下に落ちていくように手動で調整していかないと連続して火を持続させることができません。





2.調理器具にススがつく


部分的に最大火力が700〜800℃にもなると言われているロケットストーブですが、調理器具にはそれなりにススがつきます。我が家ではロケットストーブ用とキッチン用の調理器具を分けて使っていたりしますが、気になる方は注意が必要です。

3.耐久性


今回作ったロケットストーブは一斗缶ベースの簡素なモノですが、焚き口から火口までのヒートライザーを含む煙突部分はステンレス製でホームセンターで購入すると合計で3000円近くします。ネットなどで調べてみるとステンレスの耐熱温度は700℃程度のようで、ロケットストーブの火力も部分的にそれくらいまで上昇します。つまりステンレス煙突の性能ギリギリのラインでの稼働となるので、使い方によっては2〜3ヶ月で穴が開くケースもあるようです。いくら燃料費がかからないと言っても、数ヶ月毎に煙突パーツを交換していてはランニングコスト的に見ると微妙なラインかもしれません。煙突を鉄製にしたり、耐熱レンガ、U字溝、土管などで作られる方もいるようですが、加工にそれなりの道具、技術、そしてコストがかかります。我が家のロケットストーブは1日3回稼働で執筆時点の11月19日現在で2ヶ月半ほど経過しましたが、今のところ特に問題はありません。



二回にわたってお届けした調理用ロケットストーブネタでしたがいかがでしたでしょうか?比較的簡単に作れ、燃料の選択肢も広く燃費も良い上に火力も強く煙も少ないという優等生な面も持ちながら、それなりに短所もあるロケットストーブ。筆者的には大満足ですが、今後作ってみようと思う方にこの記事が少しでも参考になれば幸いです。

さて季節は11月後半に差し掛かり山間部ではすっかり冬モードに入りましたが、実はこのロケットストーブ、今現在改造を加えて室内用暖房として部屋の中で使っています。またいつかご紹介する予定なのでお楽しみに!

(本文おわり)


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